常温核融合のニュースを肯定してみる

さて、こんなニュースがありました。

「試験管内の太陽」 似非科学のレッテル外れ再び熱気  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87857740Z00C15A6000001/

常温核融合!といえば似非科学の代名詞。
STAP細胞騒ぎの時によく比較されてたのでご存知の方も多いと思います。「常温核融合は本当にあったんだ!」的なセンセーショナルなニュースなのですが、記事の書き方が実に稚拙。結局、要約すると事実としては2点だけなのです。

常温核融合関連のセミナーが実施されたよ!
・いんたーねっつで実験成功のニュースが報じられてるよ!

なんでしょうか、長々と文章を読み込んだ挙句の空しさは。。。実験成功、というのはベンチャー企業などの自主研究でデータは空かせないから不明なんですと。なぜ、こんな状況でニュース化しようとしたんでしょうか。正直理解に苦しみます。

ただ、このニュースとその関連情報を見ていると、常温核融合の主張は微妙に変化をしているようです。まずですね、名前が変わってます。「凝集系核科学」というそう。これは、常温での核融合というストーリーがどうにも作れなくなったから・・・ということもあるでしょうし、発表されている事象も常温核融合の時とは少し違うんですよね。
そこで、もし私が、このニュースの記者だったら、どういう肯定記事を書くだろうか。ちょっと実験的に書いてみました。

※私が常温核融合を肯定しているわけではありませんので、その点はぜひ誤解なきよう・・・

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■あの「常温核融合」がかえってきた?

 2015年5月14日、東京都目黒区の東京工業大学蔵前会館で、「凝集系核科学の現状と将来」と題したセミナーが開かれた。100人近い参加者のうち、約3割が企業に所属する研究者が占めた。
 「今日の発表が本当なら、これまでの物理学を覆す革命的な現象だ。なぜ、これまで世間で騒がれなかったのか」。
 初めて研究成果を知った参加者からは、こんな驚きの声が上がった。
 凝集系核科学とは、金属内のように原子や電子が多数、集積した状態で、元素が変換する現象を研究する分野。
 これは、1989年に世間を騒がせた「常温核融合(コールド・フュージョン)」に連なる研究テーマなのである。

常温核融合は否定された科学

 1989年、マーティン・フライシュマン教授とスタンレー・ポンズ教授の二人は、
パラジウムの電極を重水素の溶液中で電解したところ、化学反応では説明できない大量の熱(過剰熱)が発生した」
 という実験結果を報告し、世界中にセンセーションを巻き起こした。

 軽い元素が融合して重い核種に変わる「核融合」は、その際に膨大なエネルギーを放出する。太陽の輝きの源泉だ。それを発電システムに活用する「核融合炉」の実用化を目指し、フランスや日本などは、国際協力の下で「ITER(国際熱核融合実験炉)」の建設を進めている。核融合炉を実現するには、1億℃以上のプラズマ状態の反応場が必要になる。研究の主力は、巨大なコイルによって磁場で閉じ込めておく手法だが、当初の目標に比べ実用化は大幅に遅れている。
 この二人が発表した常温核融合では、こうした大がかりな施設が不要で、基本的には水の電気分解と同じような簡単な装置で核融合が実現できるとされ、「試験管の中の太陽」とも呼ばれた。

 だが、この報告を受け、各国で一斉に追試が行われた結果、米欧の主要研究機関が相次いで否定的な見解を発表し、権威ある学術雑誌「Nature」や「Science」では、この常温核融合に関する論文は一切掲載しないという方針となっている。常温核融合は完全に否定されていると言ってよいだろう。

■凝集系核科学が提唱している「核種変換」とは。

 凝集系核科学というのは、当時の常温核融合実験のようにバラ色のエネルギーとなる「過剰熱」の存在を主張しているわけではない。常温核融合の実験に使われたパラジウムは水素を多量に吸着する能力を持っており、触媒としてよく使われる金属でもある。そこで、パラジウムに多量に吸着した元素が何らかの形で「核種変換」を起こしているのではないか・・・というのが凝集系核科学の言い分である。核融合ではない、未知の反応があるのではないかということを投げかけているのだ。

 いくつかの研究レポートでは、過剰熱については否定しているものの、重水素や酸素以外の(つまり最初には存在しなかった)反応生成物が確認できるとしている。例えば、経済産業省(当時は通産省)が財団法人として認可したエネルギー総合工学研究所では、1994年から1998年にかけて、この常温核融合についての検証実験を行った。常温核融合については否定的な見解であったが、反応生成物の存在については「統計上有意」に認められたとしている。もし、過剰熱が得られないような反応であっても、核種変換が起こせるのであれば、これは現代の錬金術となりうる。
 2015年4月、東北大学の電子光理学研究センターでは、このテーマに取り組むため「凝集核反応研究部門」という組織を作った。核種変換は本当に起きたのか。これは、今まさに研究され始めた分野と言えるだろう。
 
■核種変換は実在するのか?

 この答えを知るには、再現性のある実験が行われる必要がある。
 実験でヘリウムなどの反応生成物が確認できれば実在するし、確認できなければ実在しない。残念ながら、相次ぐ論文や研究団体の発表は、凝集系核科学を肯定する研究者のものが多く、信頼性の高い情報はまだないようだ。また、原子核という強固なものが、そんな簡単な手順で変化するということについては、仮説のメドすら立っていないのが実情である。キュリー夫人放射性元素を発見するまで、世の中を作っている原子というものは永遠に変化しないものと信じられてきた。もし核種変換が実在するとしても、その理論的確立には相当の困難が予想される。
 東北大学の電子光理学研究センターで凝集核反応研究部門を率いる笠木名誉教授は、
「凝集系核科学の研究では、本来、核融合を阻止するクーロン反発力(同じ電荷の粒子同士が反発する力)をどう乗り越えるのか、粒子・放射線を放出しない核反応は可能か、という重要な問いかけに回答しなければならない」
 と話す。
 現時点では仮説の域を出ないが、もしこの反応が実在すれば大きなインパクトを科学界に与えるだろう。
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どうでしょうか。
ちょっとそれらしくなったのでは。

結局、肯定派の主張を整理すると
「実際にヘリウムなどの元素が検出されているんだから本物!」
ということみたい。wikipediaを見ると、経産省が検証実験を行って「反応生成物については確認」という感じで書かれており、えぇ?マジ?と思いましたが、上の記事にも書いた通り、実際には一般財団法人の研究で、経産省との関連についてはソースを確認できませんでした。こちら、研究結果の報告書も一般公開されていないため、かろうじて要点の箇条書きが拾えた程度です。でも、反応生成物は出たって書いてあるんですよねー。

エネルギー総合工学研究所
http://www.iae.or.jp/report/report_summary/report_summary_fy09/#4.18

とにかく。
そもそも常温核融合似非科学としてレッテルを貼られている以上、肯定派の研究結果をどこまで信じていいかよくわかりません。「実験データを示されても、その実験が信用できねぇよ!」というやつです。STAPもそんな感じでしたね。ですから、凝集系核科学をまっとうな科学として扱うには、肯定派の研究者からではなく、より中立的な筋からの追試が必要でしょう。ちょうど、東北大学は国立大ですし、オフィシャルな研究機関だと言えます。産学連携ということでなんかお金は入ってるかも知れませんが、状況を変える発言がなされるかも知れませんね。好意的に考えるなら、こうした研究が公費を使ってなされているということで、何らかの科学的発見が期待される分野なのかも知れません。
もちろん、全部眉唾、ということだって十分ありえます。

白にせよ黒にせよ、いずれ続報が入ってくるといいですね♪